吾輩は起業家である

第4巻

元アビリオン株式会社代表取締役 松田元さん
「僕の前に“道”はまだない」

更新:2006/5/12
文:堀内政彰(法政大学)

第3章「根性でなんとかなる教育?」

アビリオン株式会社を離れ、現在は次の起業までの充電期間を兼ねて、営業代行などを行っているという松田さん。最終章では彼の今後の展望についてお伺いします。


今後の事業内容はもう固まっているんですか。
今後の事業内容について語る

松田:

(敬称略)

今後ですか。えっと、今後は何も考えてないですね(笑)今はいろいろ調べつつ、やっていこうかなと思っているんですけど、ただ1つだけポイントがあります。 それはフリーターに対する「根性でなんとかなる教育」です。

「根性でなんとかなる教育」!?具体的にどういったものでしょう?

松田:

根性とノリでなんとかなる出口を見つけてあげて、根性とノリでなんとかさせます(笑)。僕が今、目をつけているのは飲食業と営業。これはどんな人でもできるんですよ。それに加えてこの2つは万年人不足なんですね。

でも営業って、人によって向き不向きがあると思うのですが・・・。

松田:

よくそう言われていますよね。でも僕自身も今営業の仕事をしているけれど、辛いとは思わない。じゃあ逆に、なんでみんな苦手意識が生まれると思いますか?

相手の反応が良くなかったり、契約までこぎつけなかったりすると、徐々に自信がなくなるからじゃないでしょうか。

松田:

そうですね。では、どうして相手は信用して話を聞いてくれないんでしょう?

こっちが提示している情報が不足しているから?

松田:

そう!それなんですよ。大切なのは、
「自分が何をしていて、何のために話を聞いてもらいたいのか、そしてそれにはどんなメリットがあるのか」というのをうまく伝えられる力じゃないでしょうかね。大切なのは、「自分が何をしていて、何のために話を聞いてもらいたいのか、そしてそれにはどんなメリットがあるのか」
それが分かればあとは簡単なんだろうけど、 実際には辛いからといってどんどん人が辞 めていくわけですよ。
一方、飲食業はアルバイトが即戦力になって いる現状があります。
でもアルバイトって すぐ辞めちゃう。
そうすると、また新しい 子を教育しなきゃならなくて、教育コストがかかって、教育コストがパフォーマンスされきる前に辞められちゃって、また教育コストがかかって…っていう負のスパイラルができているんですね。
僕は、そういった飲食業や営業に運び込めるような器の人材をつくろうと考えています。

それは「派遣」という形になるんですか。

松田:

イメージで言うと紹介予定派遣に限りなく近いんですね。要はうちで1回登録させて、教育しながら派遣して、それで派遣先とうまくマッチしたら巣立たせるっていう。
人材業界の今後の展開って2つ読みがあるんですね。1つは、アルバイトが激減するケース。で、もう1つは、アルバイトがめちゃくちゃ増えるケース。今、2007年問題ってあるじゃないですか。

団塊の世代の一斉退職ですね。

松田:

そうそう。それもアルバイトが減るのと関係しているんですね。
何年後かには、400万人以上の有力な人材が全部抜けるわけじゃないですか。その時には、やっぱりある程度一定の正社員母体がないと前に進まない。
だから企業側は絶対、就職に力を入れてくるはずなんです。それに今の日本経済は、右肩上がりの傾向にあります。その上昇気流に乗って、アルバイト従業員をカットして、新しく正社員雇用をしようとする企業が増えてくるんじゃないでしょうかね。

もう1つは、雇用に対する考え方自体が変わって、アルバイトなどの格付けは関係ないっていう、フリーランスな時代が来る気もします。今は「アルバイト」という言葉にくくられているんですけど、将来アルバイトの形態に限りなく近い新しいカテゴリーが出てきたら、今度はその分野が増えていくんではないでしょうか。

では、松田さんはその新たなカテゴリーを開拓していくという感じなんですか。

松田:

うん、そうですね。

ちなみにそのカテゴリーの名前はもう考えていますか。
カテゴリーの名前はまだ決まっていないですね。

松田:

いや、まだ決まってないですね。いろいろ考えたんですけどね。
「我流人(がりゅうじん)」とか。自分の好きな人生を生き続ける人、みたいなのも思いついたんですけど、もうちょっとネーミングは練らないと。

数年後には流行語大賞ですか。

松田:

そうそう(笑)是非とも狙いたいね。

派遣業界の中で大手に打ち勝つ秘策は。

松田:

正直なところ、大手の派遣会社にどうやって勝とうかっていうのはあんまり考えてないんですよ。僕は「根性とノリで何とかするんだ!」って言ってきましたしね。ただ、「それ同じサービスじゃん」って言われるのはちょっとかっこ悪いんで、「いや、ここが違うんだよ」っていうことをきちんと説明はしていきたいですね。

実際には競合を意識しすぎた結果、そこで足踏みしちゃう人も多いですよね。

松田:

そうですね。でもそれってもったいないと思います。競合がいればいるほど僕は盛り上がりますけどね。だって、そこにいろんな人がいるということは、そこに狙えるものがあるわけでしょ。

では、最後の質問です。
このコーナー「吾輩は起業家である」は、夏目漱石の小説『吾輩は猫である』からとっています。
小説冒頭の「吾輩は猫である。名前はまだない」に対して、松田さんが今はまだ持っていないもの、これから欲しいものなどを「○○はまだない」に自由に当てはめてみてください。

松田:

そっか、事前に考えてくれば良かったなぁ。
なんカッコイイこと書きたいですね(笑)

うーん・・・

最後の質問の回答に考え中
 

これでどうですか!
「僕の前に“道”はまだない」

 


高村光太郎の『道程』っていう詩です。
「僕の前に道はない、僕の後ろに道は出来る」

これすごく好きなんですよ。

 

 

――『道程』――

僕の前に道はない
僕の後ろに道は出来る
ああ、自然よ
父よ
僕を一人立ちにさせた広大な父よ
僕から目を離さないで守る事をせよ
常に父の気魄を僕に充たせよ
この遠い道程のため
この遠い道程のため


高村光太郎

僕の前に道はまだない

【記者のあとがき】


今回お話を伺うことができた松田さんは、現在まだ社長ではない。しかし、僕が彼に取材を申し込んだ時、彼はアビリオン株式会社の社長であった。
結果的に「吾輩は起業家である」第4巻は、意図せず変則的な形の更新となった。
彼は開口一番「僕は学生起業家が嫌いだ」と強烈な一言を放つ。どちらかといえば若い世代のチャレンジに肯定的な立場にあった自分としては、はじめ彼の言葉に一瞬嫌悪感さえ覚えてしまった。だがその言葉の裏には確かな重みがあった。それは「社会に対する自分の責任の欠如」。確かに、親のすねをかじり学校へ通う、自分のような多くの学生にとって、どんな些細なことでも「自分の行動には責任が伴う」という意識は、どこか失いがちなのかもしれない。また、この言葉には、いわゆる「失敗」を経験した松田さんだからこそ語ることのできる説得力もあった。

彼は起業に失敗してもなお、決して起業家精神を失ってはいない。今回、再起を目指す過程にあるアントレプレナーに出会えたことは、本当に貴重な経験となった。次世代を担う若き起業の獅子・松田元さんの次なる挑戦が楽しみである。


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